保存修理レポート

2021年02月 | 保存修理レポート

保存修理レポート72 又新殿 屋根 檜皮葺ひわだぶ

日本で唯一の皇室専用浴室「又新殿」の屋根は、建設当時の明治32年(1899)は檜の樹皮で葺かれた「檜皮葺き」でした。その後、約70年が経過した昭和44年(1969)に防火の観点などから現在の「銅板葺き」に葺き替えられましたが、傷みが少なかったことなどから、建設当時の檜皮葺きが残されている場所があります。今回の工事では、銅板屋根を全面、新しく葺き替えましたが、貴重な檜皮葺きは腐朽部分のみ修理し、保存することとなりました。
使用される檜の皮は、前回採取してから約8年ほど経過した上質なものが使用されています。
檜皮葺きは、蛇腹じゃばらという土台に、約75cmの檜の皮を約12mmずつずらしながら、「竹釘」という特別な釘で固定します。仕上がりまでに何枚も重ねるという、非常に手間がかかる作業です。また、竹釘は兵庫県丹波市でしか制作されていない、貴重な材料が用いられています。
国内でも少数の寺社仏閣などに残される伝統的工法「檜皮葺き」は、当時の技術の粋を結集し、建設された又新殿の魅力の1つです。

檜皮葺き修理完了

檜の皮、竹釘

蛇腹